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見たまま、感じたまま、思ったまま

麻疹と風疹

B:今日は麻疹と風疹についてお話しを伺います。先生、この病気は割とみんなが知っている有名な病気ですよね。

T:そうですね。子供さんのはしか、風疹というのは発疹を伴うウイルス感染症としてはあまりにも有名ですね。でも、最近実際にそれらの病気にかかった人を見たことがありますか?

B:そう言えば、私たちが子供頃は、周りにも普通に居たように思いますけど、最近ははしかや風疹にかかったと言う人の話しもあまり聞きませんね。

T:そうでしょう?予防接種が普及したことによって、これらの病気は以前より激減してきまして、日常で見かける事が少なくなってました。しかしながら、ここ数年、ワクチンの摂取率の低下に伴って、少しずつまた患者数が増えてきていると言われており、今後注意を怠ってはいけない病気と言えるでしょうね。

B:わかりました。それではまずはしかについて話しを伺いたいと思います。
私などははしかと言うと、高い熱がでて発疹が出る病気と言う印象ですが、それでよろしいのでしょうか?

T:まあ、おおざっぱに言えばそういう病気でありますね。
まずご理解しておいて頂きたいのは、はしかと言うのは子供さんがかかる流行性の病気の中では、かなり重症の病気の一つだと言うことです。合併症も多く、死亡率も高いです。江戸時代にはこの大流行で大人も含めて大勢の人が死亡しています。

まず、原因ですが、はしかの事を正式には麻疹と言いますが、はしかは麻疹ウイルスとの感染によって起こります。感染は、患者さんの咳や鼻汁の分泌物からの飛沫感染です。
感染した人はほぼ100%発病しますので、非常に伝染性が強いです。ただし、一度感染した人は、二度と感染することはありません。

B:潜伏期はどのくらいですか?流行る時期と言うのはありますか?

T:潜伏期は通常10日ぐらいです。現在は患者さん自体それほど多くないですので流行の時期と言うのは無いでしょうね。ただし、近年麻疹自体は小児も成人も少しずつ増加して地域的な小流行を起こしており、要注意と言われています。

B増えているんですねえ。発生率と言うか発生数はどのくらいなんですか?

T:都道府県毎に流行の違いがあて一概には言えませんが、2001年でも数万人単位で報告されています。
ですから決して珍しいと言うほどではありません。幸い徳島県は発生の報告が少ないですが、隣の高知県などは全国トップクラスの発生率だったようです。

B:なるほど。それではどんな症状でどんな経過を取るのか教えて頂けますか?

T:まずはしかは、大体3つの時期に分かれます。前駆期、発疹期、回復期っです。
前駆期では主に38度前後の熱、鼻水咳などの風邪症状、目やになどの結膜炎症状が3~4日続きます。こういう分泌物の多い症状をカタル症状と言いますので、この時期はカタル期とも言われます。下痢、腹痛を伴うことも多いです。

Bするとこの時期では普通の風邪と区別が付きにくいですね。

T:そうですね。発疹が出るまでは区別は付かないでしょうね。
カタル期の熱は3~4日で一旦37度前後ぐらいに解熱しますが、その後半日~1日おいて再び更に高い39度前後の熱が出現します。それと同時に発疹が顔や首のあたりから出現し始めて、数日のうちに全身に広がります。この時期を発疹期と言います。発疹は赤く小さい発疹ですが、次第に隣の発疹と繋がって、少し盛り上がった感じになってきます。この発疹期は熱も高く、鼻水や目やになどのカタル症状も更に強くなり、重病感がでてきます。
発疹期が3~4日続くと病気は次第に回復に向かいます。
解熱傾向がみられ、発疹は色が薄くなり色素沈着となってきます。カタル症状も軽くなります。この時期を回復期と言います。こういう経過で合併症を起こさなければ10日前後の経過ではしかは自然に治ってきます。

B:先ほど合併症とおっしゃいましたが、はしかの合併症としてどのような物がありますか?

T:多い合併症としては中耳炎、おっとせいのような咳が連発するクループ症候群があります。またはしかの死因となる事の多い2大合併症として肺炎と脳炎があります。心臓の心筋炎を起こす場合もあります。

B:合併症も多い病気なんですね。

T:そうですね。同じ高熱と発疹の出る病気でも、先月お話しした突発性発疹などと比べると遙かに重症の病気です。

B:診断に関してはインフルエンザのようなテストはあるのでしょうか?

T:残念ながらそういうテストはありません。血液検査で抗体の上昇があれば確定的ですが、それが解るまでには時間がかかるので、治療するための役には立ちません。現実的には、症状や病状の経過から診断することが多いようです。カタル期の最後から、発疹期の初期にかけて、口の中の頬の内側の粘膜に、コプリック斑と呼ばれる白い斑点が見られることもあり、それが診断の助けになる場合があります。

B:治療はどのように行われるのでしょうか?

T:これもインフルエンザのような特効薬はありませんので全身状態の管理、熱やその他の症状に対する対症療法が中心です。肺炎や中耳炎を合併すると抗生物質の投与も必要となります。重症の事が多く、入院を余儀なくされる事も多いです。

B:学校はどのくらい休まなければいけないのでしょうか?

T:これは熱が下がって3日後までとされています。インフルエンザが平熱になって2日でしたから、まだ措置がきついですよね。

B:予防はやはりワクチンが有効なのでしょうか?

T:はしかワクチンの有用性と言うのは明かです。現在の我が国の接種では1歳になってからワクチン接種が始まりますが、はしかにかかりやすいのは1歳前後の子供さんが多いので、お知らせが来たら出来るだけ早く接種を受けましょう。他のワクチンと重なった場合はこちらを優先した方が良い場合も多いので、かかりつけの先生とよく相談しましょう。

B:1歳前に受けたらいけないのでしょうか?

T:生後6ヶ月ぐらいまでは母親から移行したはしかの抗体があるので、ワクチンの効果が弱くなります。6ヶ月を過ぎればお母さんからの抗体は無くなるのですが、中には長く存在する子供も居るので1歳になってから接種と言うことになります。ですが、身近にはしかの患者がいるなどの理由で緊急避難的に1歳未満でワクチンの接種を受ける場合もあります。そういう人は1歳すぎれば必ずもう一度接種を受けて下さい。複数回接種すると言う事に関しては問題は見られていません。

B:ワクチンの副作用と言うのはありますか?

T:生ワクチンですので、接種後10日前後で発熱や発疹が出ることがありますが、いずれも一過性です。

B:ワクチンを打ってはイケナイ人と言うのはありますか?

T:一般的な禁忌、つまり現在別の感染症にかかっている人を除いては、3ヶ月以内に川崎病などで免疫グロブリンの投与を受けた人は、ワクチンの効果が悪いので、接種をしないようにしてください。またワクチンには鶏卵の成分がわずかに含まれるので、卵に強いアレルギーを呈したことのある人は不適当になりますが、よく主治医と相談することが大事です。

B:最近、ワクチンの効果が薄れるので、大人になってもう一度ワクチンを接種した方が良いというニュースを見たことがあるんですが。

T:ワクチンが接種されて抗体がカラダで作られたあと、はしかの患者さんに接触することによって、そのワクチンの効果が増強されます。これをブースター効果と言うのですが、はしかの病気自体が減って、ブースターをつける機会が減っているので、たしかにそういう事例は増えています。それは今後の問題になってくると思います。まず1回目をきちんと受けることを考えるようにしましょう。

B:ありがとうございました。それではまとめをお願いします。

T:
1はしかは、伝染力が強く、子供さんが重症となる事の多い、ウイルス感染症である。
2数日の前駆期(カタル期)を経て、高熱と発疹を伴う発疹期に入り、7日から10日ぐらいで改善してくるが、肺炎、中耳炎、脳炎など合併症も多い。
3治療は症状に対する対症療法となる。
4近年散発的に地域的流行が見られており注意が必要である。
5ワクチン接種が有効なので、1歳になれば忘れず早期にワクチン接種をするべきである。

B:ありがとうございました。それでは次に風疹についてお話しを伺います。
先生、風疹は三日はしかとも呼ばれていますが、これは親戚のような病気なんですか?

T:確かに風疹は、三日はしかと言われています。原因は風疹ウイルスと言うウイルスで、これははしかのウイルスとは違うウイルスです。
まあ、熱がでて発疹が出ると言うところだけは似ているのですが、病原体そのものも、病気の重さや予後も違うので、はしかの軽い奴ではありません。

B:はしかと同じく風疹も増えている病気なのでしょうか?

T:現在は風疹は減ってきている病気です。年間の報告例が3000例ぐらいでしょうか?ただ、予防接種法の改正で任意接種となってから、接種をしてない人が増えてきているので、今後次第に増えていく恐れがあります。

B:やはりワクチンによる予防と言うのは大事なんですね。

T:その通りです。

B:それでは病気の症状や経過についてお話し願います。

T:はい。この病気は主に空気を介した飛沫感染で起こります。2~3週間の潜伏期の後に、発熱、発疹、首や耳の周囲のリンパ節の腫れを症状として発症します。発熱ははしかのように高くなく、半分ぐらいの患者さんは熱がありません。発疹は顔からはじまり、全身に広がっていくことが多いです。小さな赤い発疹で、はしかのようにお互いがひっつく傾向がありません。3~4日で薄くなってきます。リンパ節は首、耳の後ろなどが腫れやすく発疹の出る前から出現することが多いです。子供さんでは、熱やリンパ節の腫れに気づかずに、発疹が唯一の症状の事もあり、そうなると診断に苦労することもあります。
病気としては3~4日で症状が殆ど消失する比較的軽い疾患です。

B:はしかと比べると軽いんですね。

T:そうですね。熱も低いし、発疹も早く消えます。だから三日はしかと呼ばれているのでしょうね。ただ大人になってかかると、はしかも風疹も共に酷くなる事が多いです。

B:はしかのような他の合併症はありますか?

T:ウイルスによる脳炎、それから血液を止める物質を減らす、血小板減少性紫斑病などがありますが、いずれも頻度も低く程度も軽いです。

B:治療は症状に対する治療が中心ですか?

T:そうです。熱が高いと解熱剤を使うぐらいで、殆ど治療を必要としない事も多いです。

B:学校はどうすれば良いんですか?

T:発疹が消失するまで出席停止になります。

B:それから話しは変わりますが、妊娠している女性が風疹にかかると問題が多いんですよね。

T:そうです。妊娠初期の女性が風疹にかかると、その胎児にウイルスの影響で、様々な障害がでます。心臓の奇形、難聴、白内障、網膜症などの先天性の異常が中心で、先天性風疹症候群と呼ばれます。これを予防するためにも小さいときのワクチン接種を怠らないようにしなければなりません。

B:治療よりも予防が大事と言うことですね。ありがとうございました。
それではまとめをお願いします。

T:はい。

1風疹は風疹ウイルスによって起こる、発熱、発疹、リンパ節腫脹を症状とする疾患である。
2全体的に症状は軽く、3~4日で改善することが多い。
3学校は発疹がなくなるまで出席停止である。
4先天性風疹症候群も含めて、ワクチン接種による予防が大事である。

ありがとうございました。


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